短編

何もない 久貞砂道

私の友人に奇妙奇天烈なものばかりを収集する癖のある、Sというやつがいる。 収集家というやつらは自分のコレクションを人に自慢したがる物で、 彼もよく、理解しかねる彼の奇妙なコレクションを わざわざ私の家まで訪れ、披露しに来る。 先日も自慢のため…

耳の裏の墨 久貞砂道

耳の裏に刺青を入れた。 何しろ耳の裏というのは狭いので、 これが墨と言わなければ何だかよく分からない染みのような、痣の様なものに見えるらしい。 しかしこれは愛染明王なのだ。 耳の裏にあるため、普段自分で見ることはできないが一人でいる時分には 合…